近年、インターネットの普及によって簡単に来年の「流行色」や「ファッション傾向」を入手することが出来ますよね。

この「流行色」や「ファッション傾向」は、国内外の社会情勢や時代の流れ、人々の嗜好やライフスタイルなどに反映し、選定されていると聞いています。

ここでは、アパレル業界を介して「流行色」「ファッション傾向(ディティールやシルエットなど)」の2つについて解説することで、より具体的に誰がいつどこで流行色を決めているのか?

また、誰がどのようにしてファッション傾向を発信しているのか?といった疑問にお答えしています。

流行色(=ファッションカラー)の決定から原材料である素材(生地)を通じてファッション傾向を商品に取り入れ、その商品が店頭に並ぶまでのタイムスケジュールについても解説しています。

それでは「流行色」「ファッション傾向」それぞれを見てみましょう!

流行色(=ファッションカラー)

ファッションカラーは、2年前に発信!

流行色は「インターカラー(国際流行色委員会:International  Commission for Color)」という組織が提案(発信)しています。このインターカラーとは組織名であって、国際流行色という意味ではありませんので注意してくださいね。

インターカラーは、1963年に設立され本部はパリにあります。年2回(春夏と秋冬)に行われる国際間(※16ヵ国)協議でファッションカラー(流行色)の方向性を検討し、30~50色が決定します。

このカラー(30~50色)を「インターカラーパレット」と呼び、世界のファッションカラーとして2年前に発信されます。2年後にトレンド商品が店頭に並ぶことを意味していますね。

  • ※16の加盟国(2016年12月時点)
    • アメリカ/イギリス/イタリア/韓国/スイス/スペイン/タイ/中国/デンマーク/ドイツ/トルコ/日本/ハンガリー/フィンランド/フランス/ポルトガル

日本は、スイスやフランスとともにこの組織の発起国であり、第1回目の会議から一般社団法人日本流行色協会(通称:JAFCA/ジャフカ)として参加しています。
英称:Japan Fashion Color Association

日本国内では、1年半前に発表!

インターカラーの情報、色彩動向調査、社会情勢からJAFCAは、日本国内の市場向けトレンドカラー(JAFCAファッションカラー)を1年半前に発表(20~30色程度)します。

JAFCAファッションカラーは、業界の最前線(原材料を開発する側)にいる合繊・紡績メーカーなどのトッププロが集合し、春夏と秋冬の年2回、レディーススウェア、メンズウェア、プロダクツ&インテリア、メイクアップといった分野に選別されます。

JAFCAは、2015年から毎年11月16日に各メディアや一般(消費者)に向けて「今年の色」「来年の色」を発表しています。なるほど「いいいろ」の日ですね!

また、JAFCAファッションカラーは店頭販売を意識し、特に流行りそうな色を「アセンディングカラー」として提案しています。日本では最も注目されているカラーですよね。服飾関連のバイヤーやデザイナーは勿論、商品企画に携わる方々からの支持を受けて益々その重要性がアップしています。

ファッション業界は、このアセンディングカラーを企業を挙げてメディアを含め、様々なキャンペーン活動から一般(消費者)へ印象付けを行っています。

現状では未だ売れ筋のカラーといえば、ダーク系カラー(ブラック・ネイビー・チャコールグレーなど)がベースになっていますが、アクセントの一つとしてアセンディングカラーが使われることも多く、アウターではコートやジャケットのワンポイントデザインや裏地、インナーではシャツ(ブラウス)やマフラー(ショール)といったアイテムに使用することでそのインパクトを与えています。

ファッションカラーが2年も前から決められている理由

では、ファッションカラーの決定から素材(生地)メーカーの展示会までをタイムスケジュールで解説しましょう!

  • 《タイムスケジュール》
    【2年前】
    インターカラーが会議で「流行色」を決定(発信)。

    【1年半前】日本では、JAFCAが「JAFCAファッションカラー」を発表。

    【1年前】素材(糸・生地)にカラーが色出しされ、素材(糸・生地)展示会が開催。

    続いて、アパレルメーカーの展示会、デザイナーコレクションへといった流れです。

アパレルメーカーなどは、素材(生地)メーカーを通じて商品企画を1年前にスタートさせ、半年後には世界各地でコレクションや展示会を開催することになります。

ファッションカラーの決定からファッション傾向の導入を経て、トレンド商品に仕上るまでのリードタイム(2年)に相当する訳です。確かに原材料から考えると2年前に決めなければ間に合わないことも理解できますよね。

PS.)JAFCAが発行する季刊『流行色』誌について
年4回発行する色彩情報誌です。百貨店・量販店におけるシーズンごとの調査により、売れ筋色データを解説するとともにデザイナーズコレクションや世界各地で開催される展示会の動向なども解説されています。

JAFCAで発行するトレンドカラー情報だけではなく、インターカラー、海外トレンドカラー情報などもこの一冊で知ることができます。

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ファッション傾向(ディティールとシルエットなど)

ファッション傾向の発信源とは?

アパレル業界でファッション傾向の発信源と言えば、やはりヨーロッパですよね。洋服の歴史や文化の違いもあり、インターカラー同様にヨーロッパから発信されることが多いようです。

時代に合った洋服を作るために原糸や素材(生地)にこだわり、そこにファッションカラーを取り入れている。そのためにヨーロッパには多くの原糸メーカーや素材(生地)メーカーがあります。

展示会やトレンド商品の新作発表会には、世界中から多くの企業や関係者が集まります。ディティールやシルエットについては、インターカラーの情報や社会情勢などといった様々な角度から各デザイナーが新作コレクションを発表。

ブランドやデザイナーの個性も当然ありますが、大きな方向性としては決まっているようですね。各社(デザイナー含む)は、この大きな方向性をベースに細かいディティールの調整や微妙なシルエットの変化でオリジナル性を出し差別化を図っているようです。

また、同時にデザイナーはこの大きな流れをブランドのコンセプトに導入し、位置付けを考えてテーマを発表します。ブランドを展開する全てのアイテムがここで決まります。

それでは、次にヨーロッパで行われる有名なファッションイベントを見てみましょう!

ヤーン(糸)展示会

  • 「エクスポフィルExpofil」
    パリで年2回開催。
    エクスポフィルExpofilは、プルミエールヴィジョン(PV)プリュリエルの中にあって、アパレルでは最も原材料に位置するヤーン(糸)とファイバー(繊維原料)の国際見本市です。

  • 「ピッティ フィラティpitti filati」
    フィレンツェで年2回開催されています。織物、ニットの国際的な展示会。次のシーズンの予測がアパレル業界に与える影響は大きく、70社以上の企業やグループが常に参加。近年では、展示者や入場者があまりにも多いため制限されています。

テキスタイル(服地)展

  • 「ミラノ・ウニカMILANO UNICA」
    ミラノで年2回開催される、国際的なテキスタイル(布地・織物)見本市。イタリアメーカーを中心とした有力テキスタイル素材が並ぶ世界最大級規模の見本市といわれ、この期間中は、世界中のバイヤーがミラノに集まります。

  • 「プルミエール・ヴィジョンPremiere Vision 」
    パリで年2回開催される。「ミラノ・ウニカ」に並ぶ
    紳士・婦人服地の見本市です。

新作コレクション発表会

  • 「ピッティ・イマージネ ・ウォモ Pitti Immagine Uomo」
    フィレンツェで年2回開催されています。メンズでは世界最大のプレタポルテ(高級既製服)見本市です。
  • ワールド「コレクション」
    ファッションブランドの新作発表会。チャネル別にロンドン・ミラノ・パリ・ニューヨーク・東京で開催されています。

デザイナーのコレクションやアパレルメーカーの展示会が始まる頃になると、消費者へ向けてファッション傾向のトレンド情報が半年前に発信されます。消費者への関心もここで一気に高まりますね。

私自身も20年前(アパレルメーカー時代)にプルミエール・ヴィジョン(イタリア・コモ)に素材(生地)の情報と市場調査を兼ねて行ったことがあり、世界各国から集まったアパレル関連の人達で会場は賑わっていた記憶があります。

当時は未だインターネットの普及が殆どなく、情報収集はテキスタイル展やヤーン(糸)展示会を兼ねて、ミラノ(イタリア)やパリ(フランス)の有名ブランドショップへ出向きファッション傾向を調査していました。カタコトの英語で言葉も殆ど通じず、困った経験をした記憶が蘇りました。

市場調査では、各有名ブランドショップでウィンドウのディスプレイを写真に収め、日本国内の商品企画に反映させていました。当時からヨーロッパでは、ウィンドウの商品がそのショップの顔としてトレンド商品が飾られていました。

今でこそ、インターネットによってファッション傾向が同時配信されていますが、当時は実際にヨーロッパなどへ出向き、情報を入手していた頃が懐かしく感じます。

いよいよ実シーズン半年前に販促が開始!

ここからは、いよいよトレンド商品の各社(各ブランドなど)のお披露目会スタートです。この頃が一番アパレル業界でワクワクする華やかな時期ですよね。各メディア(ファッション誌含む)も全開です!

それでは、タイムスケジュールで解説しますね。

  • 《タイムスケジュール》
    【半年前】

    アパレルメーカー展示会、デザイナーコレクションがあり、ファッション誌にも取り上げられる。

    【実シーズン】
    店頭にトレンド商品が並び販売スタート。

店舗(小売店)では、このタイミングに合わせてアパレルメーカーの展示会などで商品を発注し、実際の販売時期に備えます。2年前のインターカラーによる「流行色(ファッションカラー)」の発信からファッション傾向を踏まえ、トレンド商品に仕上るまでの過程(仕組み)を紹介してきました。

以上が、2年間の歳月を掛けて、トレンド商品を仕上げるまでのアパレル業界の仕組みです。ファッションも様々な仕組みを経て回っていることが分かりますね。

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まとめ

アパレル業界の「流行色(=ファッションカラー)」決定から素材(生地)を通じて「ファッション傾向(ディティールやシルエットなど)」を取り入れ、店頭にトレンド商品が並ぶまでの過程(仕組み)について、タイムスケジュールを交えて解説しています。

2年前に流行色(=ファッションカラー)が決まる理由

  • 《タイムスケジュール》
    【2年前】
    インターカラーが会議で「流行色」を決定(発信)。

    【1年半前】日本では、JAFCAが「JAFCAファッションカラー」を発表。

    【1年前】各地で素材(糸・生地)メーカーの展示会が開催。

    【半年前】アパレルメーカーの展示会、デザイナーコレクション、ファッション誌が情報を取上げる。

    【実シーズン】店頭にトレンド商品が並び販売スタート。

トレンド商品とは、2年前からアパレル業界が仕掛けた「流行」です。この「流行」に興味を持って頂いた方にお伝えしたいことは、現状に流されずトレンド商品が本当に自分によく似合っているか?サイズが体型にマッチしているか?高額品を無理に購入していないか?などといったところを考慮し、購入して頂ければ幸いです。

ファッションは、自分が楽しくなければ意味がありません。流行(色を含め)をアパレルだけではなく様々なものに上手く取り入れ、感性を養うことも普段の生活では必要だと思っています。身近に「おしゃれ」を楽しみましょう!

私自身のファッション定義は、人に会う時の「身だしなみ」であり、相手に不快感を与えない服装で、好みや流行を取り入れて楽しむことです。これは、アパレルだけではなく髪型や持ち物なども同じです。

ファッションは、確かに人そのものの表現であり美的、精神的、社会的充足感を求めるものだと思います。服装で気持ちが前向きなることがあり、私自身もアパレル業界へ就職した理由は、洋服の魅力(洋服で気持ちが変化する)を感じたからです。