これからのアパレル業界は、ファッション感覚(感性)も大切ですが、商品知識や生産技術、接客マナーも職種によって重要になります。

インターネット情報による消費者ニーズの多様化が進み、アパレル業界のレベルアップも余儀なくされています。インターネットからの商品画像だけでは伝わり難い生地(素材)の風合いや着用感は、実際の商品に触れないとわからないところもありますよね。

縫製工場内での手作業もまだまだ多く、同品番の商品でもサイズによって商品の顔(縫製グレードの違いによる見た感覚)も違います。

近年では、インターネットで商品を取寄せ手に取って風合いを確認したり、試着できるシステムもありますが、店舗で実際に試着して購入する方がまだまだ多いように感じます。

衣料品は、時に心(気持ち)を前向きに変えてくれることがありますよね。こういった商品を扱う「おもしろい」ところがアパレル業界にあります。

アパレル業界で仕事を考えている方、すでに仕事をされている方にとって自分に必要だ!と思う有力な「資格」は是非この機会に取得をしてスキルアップを目指してください。必ず、自信に繋がります。

ここでは、自身のアパレル業界での経験から有利な資格「おすすめトップ10!」として個人的な見解を交えて紹介しています。職種によっては必要ではない資格もありますが、参考にしてください。

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アパレル業界で有利な資格(おすすめトップ10!)

①色彩検定(1~3級) 公的資格

公益社団法人色彩検定協会(略称はA・F・T)が実施する色」に関する知識や技能を問う試験であり、1級から3級までの3段階に分かれています。文部科学省が推進する生涯学習の一環としての評価があり認知度も高い有利なこの資格。

色彩はさまざまな業界で注目されていますね。試験については、1級は、2級及び3級の内容も含まれるため、相当の知識が要求されますので、先ずは3級からのスタートがおすすめです。

《試験内容》 受験資格は特に設定ありません。

  • 1級:年1回実施。
    1次試験と2次試験に分かれ、1次試験はマークシート方式で、2次試験は実技を含む記述式。

  • 2級:年2回実施。
    一部記述式のマークシート方式。

  • 3級:年2回実施。
    マークシート方式。

合格基準は、各級満点の70%前後。合格後は合格証書と色彩コーディネーター称号が記載された資格証が贈られますよ。

アパレル業界では、多くの職種で色彩の知識は必要になります。企画開発では、副資材(裏地や芯地、釦など)の色合わせ(感性以外)で必要になるでしょう。

販売(接客)では、お客さまにコーディネートの提案をする機会も多く、色彩に関する正しい知識は説得力に繋がること間違いなし。店頭のディスプレイにも有効ですよね。

②ファッションビジネス能力検定(1~3級) 民間資格

ファッションビジネスに関する商品の企画から生産、流通までの専門的な知識、技術、能力を証明する資格です。アパレル業界での企画・営業力を認定する上で有利な資格の一つでしょう。

感性を重視するデザイナーのような専門職よりは、アパレルショップの経営者や店長などを目指す総合職向けで、ファッションをビジネスとして捉え、ステップアップを考えている方に最適です。

《試験内容》 受験資格は特に設定ありません。

  • 1級:年1回実施。
    「マーケティング戦略」「マーチャンダイジング戦略」「流通戦略」「マネジメント知識」「ファッションビジネス知識」5科目の筆記試験。

  • 2・3級:年2回実施。
    「ファッションビジネス知識」と「ファッション造形知識」2科目の筆記試験。

合格基準は、2・3級は「ファッションビジネス知識」で60%、「ファッション造形知識」で70%の得点が目安。1級は「マーケティング戦略」など5科目それぞれ60%の得点が目安になります。アパレル業界での経験が3~4年は必要なレベルと言えるでしょう。

ファッションビジネスやマーケティングの基礎知識、販売時の接客マナー、店舗の演出などに関する知識が必要になるため、アパレル業界で働く上で間違いなく有力な資格と言えます。

③販売士(1~3級) 公的資格

日本商工会議所及び各地商工会議所が実施する検定試験であり、経済産業省、中小企業庁が後援しています。リテールマーケティング検定とも言う。

販売に必要な商品知識や販売技術、仕入れや在庫管理、マーケティングなど、高度で専門的な知識を持つ販売のプロの育成を目指す資格です。小売業界で勝ち抜くための有利な資格であり、流通業界で唯一の公的資格として高い信頼と評価があります。

試験は、下記の1級~3級まで「小売業の類型」「マーチャンダイジング」「ストアオペレーション」「マーケティング」「販売・経営管理」5科目共通の筆記試験(難易度が異なる)。

《試験内容》

  • 1級:年1回の実施。
    各科目が客観式選択問題と記述式問題の2通りで出題されます。小売業の経営に関する高度の専門的な知識を身につけ、経営計画を立案し、総合的な管理業務を遂行できること。

  • 2級:年2回の実施。
    マークシート方式。小売業について主として販売に関する専門的な知識を身につけ、ある程度の管理業務を行うことが出来ること。

  • 3級:年2回の実施。
    マークシート方式小売店舗運営の基本的な仕組みを理解し、販売員としての基礎的な知識と技術を身につけ、販売業務が出来ること。

尚、この資格には有効期限があり、資格の取得から5年である。期限内に資格更新講習の受講または指定通信教育講座の受講をしなければ、失効になります。

但し、2級・3級は期限内に上級の販売士試験に合格した場合、認定証の提示をすれば資格更新講習の受講または指定通信教育講座の受講が免除されて資格を更新することができます。

合格基準は、5科目とも100点を満点とし、(1)全科目の平均点が70点以上、(2)50点未満の科目がないこと、以上2つの条件を満たすことが条件になります。 

販売士は、接客技術や商品知識、売場管理能力や店舗経営能力など、販売に関する必要な知識を身につけていることを証明できる資格。商品知識や接客技術によって、お客さまに最適な商品を提供することが可能になるでしょう。

また、アパレル業界だけではなく、さまざまな小売業界で役立つ有利な内容です。先ずは、3級から資格を取得し、徐々にレベルアップして販売のプロを目指してくださいね。

④繊維製品品質管理士(TES)試験 民間資格

Textiles Evaluation Specialist=TES。資格取得者は、アパレル業界では繊維のスペシャリストとして信頼され、あらゆる衣料品の品質・性能の向上を図ったり、消費者からクレームが出ないような対策なども考えます。

TESを取得するには、日本衣料管理協会が行う認定試験に合格しなければなりません。受験資格は特に設定ありませんが、専門的な知識が必要。試験方法は、短答式と記述式(論文など)があります。

《試験内容》

  • 筆記試験「繊維に関する一般知識」「家庭用繊維製品の製造と品質に関する知識」「家庭用繊維製品の流通、消費と消費者問題に関する知識」「事例」「論文」の5科目。

合格基準は、専門性と筆記での表現力が必要(難易度は高め)。合格後は5年の有効期限があり、更新するためには更新試験に合格する必要があります。

生地(素材)、加工、縫製、流通などアパレル業界のあらゆる業種で活躍できます。取引先からも信頼があり、スムーズな交渉を可能にする有利な資格と言えます。私の知っている方達は、アパレルメーカーの中心的な存在として皆さん活躍されています。

⑤商品装飾展示技能検定(1~3級) 国家資格

技能検定制度の一種で、都道府県知事(問題作成等は中央職業能力開発協会、試験の実施等は都道府県職業能力開発協会)が実施している。試験は毎年1回、学科と実技試験があります。

受験資格は、3級は誰でも受験可能ですが、専門性があるため関連学科を専攻する短大生や専門学校生などが多く有利なところがあります。2級以上は実務経験が必要。

《試験内容》

  • 1・2級:年2回実施(学科試験/2回、実技試験/2回)。
    学科試験は「商品装飾展示一般」「商品装飾展示法」「材料」「関係法規」「安全衛生」

    実技試験は「商品装飾展示作業」

  • 3級:年2回実施(学科試験/2回、実技試験/2回)。
    学科試験は「商品装飾展示一般」「商品装飾展示法」「材料」「関係法規」「安全衛生」

    実技試験は「商品装飾展示作業」

実技では、実践的で法規などを含む幅広い知識が必要、売り場の再現というよりは、その人の展示能力そのものを見る試験になります。合格基準は、多少の慣れや経験が必要ですが、特に難しく考える必要はなくクローズアップしたい商品の演出と自信を持った行動がポイント。

取得後は、店舗のショーウィンドウなどを感性と技術によるビジュアルな表現力から商品ディスプレイのスペシャリストといった位置づけで評価されますよ。

商品の情報や販売時期に合わせ、商品を効果的に陳列し演出を行う。マーケティングからファッション情報、商品の特徴など幅広い知識が求められます。

⑥洋裁技能検定(初~上級) 民間資格

洋裁に関する知識と実技の技術を証明する資格です。初級は基本的な内容となっていますが、上級では立体裁断やデザイン画作成など専門的な知識や技術が問われます。

受験資格は、専門性から本協会が認定した学校の学生。

試験については、洋裁や服装に関する筆記試験と一般的デザイン作品の実技試験があります。取得は、技能検定に合格しなければなりません。

《試験内容》

  • 初級:年1回実施。 
    筆記試験(理論):①洋裁用語・用具、②服装常識、③日常着の一般的な素材知識、④基礎製図、⑤実技に必要な知識

    実技試験:婦人、子供服の日常着の制作

  • 中級:年1回実施。
    筆記試験(理論):①洋裁用語・用具、②流行、③服装の社会性、服飾マナー、④素材、⑤服装と色彩、⑥スタイル画、⑦実技の専門知識

    実技試験:一般的デザイン作品の制作

  • 上級:年1回実施。
    筆記試験(理論):①中級(①~⑦の専門知識)、②服装史、③流行と社会生活、④実技に必要な知識

    実技試験:一般的デザイン作品の制作

洋裁技能検定の資格取得者は、アパレルメーカーが主な活躍の場となりますが、高い技能があれば在宅で衣料品のリフォームやオーダーメイドなど洋裁の仕事を請け負うことも可能になりますよ。

⑦染色技能士検定(1~2級) 国家資格

国家資格である技能検定制度の一種で問題作成等は中央職業能力開発協会、試験等は都道府県職業能力開発協会が実施している。染色に関する学科及び実技試験があります。

繊維の染色や染み抜き、生地に付着した汚れを修復、復元する染色補正に必要な技能を証明する資格。

染色加工や繊維に関する知識を問う学科試験と「糸浸染作業」「スクリーンなせん作業」「織物・ニット浸染作業」などから選択する実技試験があります。

《試験内容》

  • 1級(実技作業試験):年2回実施(学科試験/2回、実技試験/2回)。
    糸浸染作業(3課題):試験時間/5時間30分。
    型紙なせん作業とスクリーンなせん作業。
    染色補正作業(3課題):試験時間/5時間。
    織物・ニット浸染作業(2課題):試験時間/5時間(バッチ染色)、4時間(連続染色)

  • 2級(実技作業試験):年2回実施(学科試験/2回、実技試験/2回)。
    糸浸染作業(3課題):試験時間/5時間30分。
    型紙なせん作業とスクリーンなせん作業。
    染色補正作業(3課題):試験時間/4時間30分。
    織物・ニット浸染作業(2課題):試験時間/5時間(バッチ染色)、4時間(連続染色)

縫製(染色)工場内で付着した汚れ、クリーニングにおける染み抜きの作業場などでは、専門的な技能が有利に活かせるでしょう。

⑧ニット製品製造技能士検定(1~2級) 国家資格

職業能力開発促進法に基づいて行われる国家資格の技能検定の一つで、問題作成は中央職業能力開発協会、試験は都道府県職業開発協会が実施しています。

製図、型紙作り、裁断、縫製までのニット製品の製造に必要な「技能」を証明する資格です。学科ではニット製品の総合的な知識、実技試験ではニット製造作業などの実技が試されますよ。

受験資格は、1級は7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上の実務経験が必要です(※学歴により必要な実務経験年数が異なる)。2級は、実務経験2年以上が必要です(※学歴により実務経験が不要になる)。

《試験内容》

  • 1・2級:年2回実施(学科試験/年2回、実技試験/年2回) 
    学科試験:ニットに製品一般、材料、意匠図案、安全衛生、選択科目(丸編みニット製造方法、靴下製造方法)。

    実技試験:選択科目(丸編みニット製造方法、靴下製造方法)

  • 3級:年2回実施(学科試験/年2回、実技試験/年2回)
    学科試験:ニットに製品一般、材料、意匠図案、安全衛生、選択科目(丸編みニット製造方法、靴下製造方法)。

    実技試験:選択科目(丸編みニット製造方法、靴下製造方法)

アパレルメーカーやニッターといった製造分野が主な活躍の場になりますが、フリーとして活動されている方も多く、専門性は間違いなくある有利な資格の一つでしょう。

⑨パターンメーキング技術検定(1~3級) 民間資格

デザインを元に、実際に布を裁断する為の型紙(パターン)を起こす技術や基礎知識を計る検定。日本ファッション教育振興協会が主催する検定になります。魅力的な衣料品を生産するためには、型紙(パターン)としての精度、効率、技術の高さが求められます。デザイナーとしても必要な資格ですよ。

受験資格は、特に設定はありません。

試験については、2級、3級ではアパレル業界やパターンメーキングに関する知識、技術に関する筆記試験とパターン作成の実技試験があります。1級は、実技試験だけですよ。

《試験内容》

  • 1級:年1回(大阪・東京)
    実技試験
    課題のデザインと生地(素材)などの条件に合わせて自由な方法でパターンメーキングし、シーチングと工業用パターン、縫製仕様書を作成して提出。同一条件下での知識・技術の検証・評価が前提であるため、原型などは配布されたものを使用する。

  • 2級:年1回(筆記試験・実技試験)
    筆記試験:理論マークシート方式
    企業におけるパターンメーキング、グレーディング、マーキング、更にアパレルCADや縫製仕様書などの書類関係、生地(素材)とパターン、サンプル作成までのパターンメーカーとして必要な知識に関する出題。

    実技試験
    フラットパターンメーキング、またはドレーピングのいずれかの方法を選び、出題テーマに基づくパターンを完成。ジャケットが主に出題されるようです。

  • 3級:年1回(筆記試験・実技試験)
    筆記試験:理論マークシート方式
    アパレル業界に関する知識やパターンメーキングの用語、基本寸法などのファッション業界で活躍するための基礎的な知識に関する出題。

    実技試験
    フラットパターンメーキング、またはドレーピングのいずれかの方法を選び、出題テーマに基づくパターンを完成。ブラウスが主に出題されますよ。

ファッション(服飾)専門学校などで3年間、ファッション造形知識・技術。工業用パターンメーキングやグレーディングに関する専門的な教育を履行したレベルの方が対象になります。

資格取得者は、パタンナーとして主にアパレルメーカーの仕事がベースになりますが、技術力が高ければトップデザイナーの専属やフリーとして活躍することも多々あります。

⑩CAD利用技術者試験(1~2級) 民間資格

CAD(computer-aided design)=「キャド」とは、コンピューターを利用して行う機械や構造物の設計・製図。また、その機能を組み込んだコンピューターシステムやソフトウエアを指します。

一般社団法人コンピューター教育振興協会が主催するCADオペレーターに関する試験になります。CADを利用した知識やスキルを明確化し一定水準に達している者に対して評価・認定を行う資格です。

受験資格としては、2級は特に設定はありませんが、1級の場合は2級資格者及び過去の2級合格者に限られています。

《試験内容》

  • 1級:年2回実施。
    CADシステムを使用した製図と機械分野の専門知識に関する筆記試験と機械要素に関する実技試験。合格基準は、実技・筆記が各50%以上、総合が70%以上

  • 2級:年2回実施。
    CADシステムと製図分野に関する筆記試験。合格基準は、CADシステム分野、製図分野が各50%以上、総合が70%以上

資格取得者は、設計事務所や建築会社・機械関係などの企業はもちろん、アパレル関係のデザインなど、スキルを活かす分野が広く有利になっています。

アパレル業界でCADは衣服の設計図作成に使用され、デザイナーの意向を細かくデータにし具体的な形にするために必要なスキルになっています。特殊ですが取得すれば有利な資格です。

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まとめ

近年アパレル業界の消費者は、インターネット情報の影響によりニーズが多様化し、商品知識もレベルアップしています。それに伴い、アパレル業界内の職種レベルもアップさせる必要があります。そのために職種に応じた「資格」は重要視され始めています。

アパレル業界で有利な資格(おすすめトップ10!)

  • ①色彩検定(1~3級) 公的資格
  • ②ファッションビジネス能力検定(1~3級) 民間資格
  • ③販売士(1~3級) 公的資格
  • ④繊維製品品質管理士(TES)試験 民間資格
  • ⑤商品装飾展示技能検定(1~3級) 国家資格
  • ⑥洋裁技能検定(初~上級) 民間資格
  • ⑦染色技能士検定(1~2級) 国家資格
  • ⑧ニット製品製造技能士検定(1~2級) 国家資格
  • ⑨パターンメーキング技術検定(1~3級) 民間資格
  • ⑩CAD利用技術者試験(1~2級) 民間資格

資格には、専門分野もあれば他の業界で活かせる資格もあります。今回は比較的アパレル業界に特化した資格を紹介しました。専門的な知識は自信に繋がり、仕事の幅も広がるでしょう。

アパレル業界での私自身の経験からピックアップさせて頂きました資格ですが、ここに紹介した以外にも多種多様な資格があります。ご自身にあった将来を見据えて有利になる資格を取得し、スキルアップに繋げてください。