近年、日本のビジネス社会ではクールビズ(COOLBIZ)やウォームビズ(WARMBIZ)といった政府が2005年度から地球温暖化防止対策で打ち出しているビジネス向け軽装スタイルによって、ラフな着装が定着しその影響からカジュアル化が進み、若年層に限らずさまざな人たちの間でオフィスカジュアルといった新しい形式で「おしゃれ」を楽しむようになりましたよね。
しかし、長引く不況や相次ぐ自然災害の影響で「おしゃれ」に掛ける費用を抑えながら、今の時流に合ったウエアを求めている方が多いように感じています。
そういった状況の中で、メンズやレディースのビジネスシーンでおしゃれに着回しのできるセットアップスーツといった商品アイテムが注目されています!
ここでは、この注目されているセットアップスーツとはどのようなスーツなのか?また、なぜ3つの着回しが人気なのか?といった内容について解説しています。それではその内容を見てみましょう!
セットアップスーツについて
セットアップスーツとは、トップス(上)とボトムス(下)を同じ生地(共地)で仕上げ、それぞれを単体で販売している商品アイテムをいいます。トップス(上)とボトムス(下)をそれぞれ違ったサイズで購入できるため、さまざまな体形の方に着用して頂ける便利な商品です。トップスあるいはボトムスだけを単体(品)で購入(買い足し)して着回すことが可能。
セットアップスーツには、大きく3タイプの商品群があり「ビジネス向け」以外に「スポーツ向け」や「カジュアル向け」があります。
- ビジネス向けは、一般的なビジネススーツによく使用されている素材(ウールやポリエステルなど)をベースにしっかりとしたテーラード(仕立て)な縫製でジャケットやスラックス(スカート含む)などのアイテムを展開。
- スポーツ向けは、スウェットやジャージなどの商品群でトレーニングウエア(運動着)や学校の体操服など含む。
- カジュアル向けは、デニム地やチノクロス(しっかりとした綿の綾織物)などの素材を使って、トップスとボトムスを展開。
ここでは「ビジネス向け」の商品に絞って解説しています。
セットアップスーツの縫製工場は、ビジネススーツの縫製工場と違って、ジャケットはジャケット専用工場(単体)で縫製し、スラックスはスラックス専用工場(単体)で縫製することにより、効率のよい分業制が生産性を向上させ、結果的に流通コストなどの経費を抑えることに繋がっています。
スーツを専門に縫製する工場は、ジャケットとスラックスを同時に裁断する手間と、それぞれを縫製する工程ラインの違いによって、生産性がジャケットやスラックスを単体で縫製する工場に比べて、明らかにリスクが高く、効率は低下します。
また、ジャケットやスラックスの専用工場は、ビジネススーツを専門とする工場に比べて、よりカジュアルなデザインや縫製仕様に普段から慣れていることで、しっかりとしたテーラード(仕立て)縫製ながら、少しカジュアルな装いにも対応が可能な商品に仕上げることができます。正に今の時流に合ったセットアップスーツに相応しい縫製工場と言えますよね。
セットアップスーツに使用されている生地については、ジャケットやスラックス(スカート含む)といった単体での着回しがベースとなるため、それを考慮した「素材」と「色目」「柄(がら)」に設定されています。
それでは「素材」「色目」「柄(がら)」について、見てみましょう!
素材
セットアップスーツに使用されている生地(素材)を代表して、ウール(羊毛)100%素材、ウール50%/ポリエステル50%混紡の素材、ポリエステル100%素材の3つに絞って解説しますね。
ウール(羊毛)100%素材
- 春夏向けは、生地の表面をできるだけクリアーに加工され、素材の持つ上品な光沢を活かした商品ラインアップが多く、高級感がある。
- 秋冬向けは、生地の表面を起毛(繊維を毛羽立たせる)加工を施し、ウォーム感を出している商品が目立つ。羊毛の持つ暖かさを重視している。
- 店頭の販売(参考)価格
- ジャケット:30,000~35,000円
- スラックス:9,000~11,000円
- スカート:7,000~9,000円
- ベスト:7,000円
ウール(羊毛)100%素材の商品群では、特にビジネスを重視した方におススメです。
ウール50%/ポリエステル50%混紡の素材
- 春夏向けは、ポリエステルの機能性を重視し、軽くてハリ・コシのある素材をベースに展開している。
- 秋冬向けは、ポリエステルの光沢を抑えウールの暖かさを考慮した高密度な組織の生地が多く展開されている。起毛素材も多い。
- 店頭の販売(参考)価格
- ジャケット:20,000~25,000円
- スラックス/7,000~9,000円
- スカート/5,000~7,000円
- ベスト/5,000円
ウール50%/ポリエステル50%混紡素材の商品群では、特にビジネスシーンやカジュアルシーンにも幅広く着用できるボリュームゾーンとして設定されているように感じます。
ポリエステル100%素材
- 春夏向けは、ポリエステルの丈夫さを利用し薄く軽くを重視した商品が多く、家庭洗濯が可能。
- 秋冬向けは、しっかりとしたダブルフェイス(二重織り)のような重量感のある素材が多く、機能性(家庭洗濯が可能や防シワ性など)を全面に出した商品ラインアップが目立つ。
- 店頭の販売(参考)価格
- ジャケット:10,000~15,000円
- スラックス:5,000~7,000円
- スカート:3,000~5,000円
- ベスト:3,000円
ポリエステル100%素材の商品群では、少しカジュアル感が強いが、価格帯や機能性(家庭洗濯が可能や防シワ性など)を含めて、セットアップスーツとして人気のゾーンです。
色目
色目は、セットアップスーツのコーディネートとして最も重要。自分に合った色目を設定することが基本です。
セットアップスーツの基本色は「ブラック」「ネイビー」「グレー」「ブラウン」「ベージュ」の5色。
- 春夏向けでは、寒色系の色目をベースとして「ネイビー」「グレー」を中心にコーディネートを意識する。「ブラック」はオールシーズンに対応が可能。レディースでは、この時期から「ベージュ」に人気が集中する。
【ネイビー×グレー】【ネイビー×ベージュ】【グレー×ベージュ】など - 秋冬向けは、春夏向けに変わって暖色系の「ブラウン」が売れ始める。「ブラック」とのコンビが人気。
【ブラック×ブラウン】【ブラウン×ベージュ】【ブラック×ベージュ】など
ビジネスシーンをベースに着回しを考慮した配色によって、コーディネートが簡単にできるように設定されています。
柄(がら)
セットアップスーツの柄は、基本的に組み合わせが簡単にできるように無地組織と小柄をベースに設定されています。
- 無地組織では、ベーシックなピンヘッド(針先のような柄)やバーズアイ(鳥目のような柄)、カルゼ(綾柄)にヘリンボーン(杉綾)といった組織柄が設定されている。
- 小柄では、マイクロチェックや市松模様、千鳥格子などのバリエーション。
柄については、ジャケットやスラックス(スカート含む)の単体によるコーディネートを想定しているため、異素材との組み合わせで強調し過ぎることのないように設定されています。
ここからは、セットアップスーツの魅力である3つの着回しについて解説します。ビジネスシーンでの「スーツ」着用はもちろん、「ジャケット」や「スラックス(スカート含む)」といった単体でおしゃれに着用できるところがポイント。
それでは、3つの着回しについて見てみましょう!
関連記事:アパレルは素材の特徴で決まる!今注目される17つの機能性とは?
おしゃれな3つの着回し
ここでは、セットアップスーツを「スーツ」「ジャケット」「スラックス(スカート含む)」といった単体によるそれぞれの着回しをビジネスシーン向けとリラックスシーン(デスクワーク)向けに分けて解説しますね。
セットアップスーツは、1着あれば異素材とも便利に着回しのできる商品ですが、さらに色(柄)違いで2着あればセットアップスーツによる着回し(組み合わせ)の幅が広がり、より多くのコーディネートが楽しめます。
「無地のセットアップスーツ」+「色(柄)違いのセットアップスーツ」=2着での着回し(組み合わせ)が、おススメ!
- スーツによる着回し
- ビジネスシーンでは、通常のスーツスタイルとしてインナーは、ワイシャツにネクタイ(レディースはブラウス単体)を合わせて商談や会議などに着用が可能。
- リラックスシーンでは、スーツスタイルにノーネクタイでインナーは無地や柄物のカジュアルシャツやポロシャツが基本です。
また、Tシャツ(セーター含む)などを合わせるスタイルが増えていて、少しカジュアルテイストなセットアップスーツには、皮のスニーカー(ブラックやホワイト)がおしゃれですね!
- ジャケット(単体)による着回し
- ビジネスシーンでは、同素材で色(柄)違いのジャケットとスラックス(スカート含む)を、その日の気分で交互に組み合わせを変えて着用し、インナーはワイシャツ+ネクタイ(レディースはブラウス単体)を合わせることで商談や会議などに着用が可能。異素材のビジネス向けスラックスと組み合わせても当然OKです!
- リラックスシーンでは、ボトムスには異素材のコットンパンツやジーンズを合わせるとおしゃれですよね。インナーは無地や柄物のカジュアルシャツやポロシャツ、Tシャツ(セーター含む)などをその日の気分で変えることがポイント。ここでの靴(スニーカー)は、どんなタイプでもでOK!
- スラックス・スカート(単体)による着回し
- ビジネスシーンでは、セットアップスーツのスラックス(スカート含む)は、無地と小柄がベースになっているため、ビジネスはもちろんコットン素材のようなカジュアルなジャケットとの組み合わせが可能。
ここでのポイントは、インナー(ワイシャツ・ネクタイなど)の色目です。ジャケットとスラックス(スカート含む)を繋ぐ、インナーの色目はコーディネートで最も重要な役割です。着用シーンを考慮した色目にするように注意しましょう! - リラックスシーンでは、カジュアルなアウター(ブルゾンやジージャンなど)にもコーディネートが可能なスラックスです。ラフにスニーカーやカジュアルなシューズを合わせるとおしゃれですね。
- ビジネスシーンでは、セットアップスーツのスラックス(スカート含む)は、無地と小柄がベースになっているため、ビジネスはもちろんコットン素材のようなカジュアルなジャケットとの組み合わせが可能。
セットアップスーツは、ビジネススーツ向けの素材を使用し、しっかりとしたテーラード(仕立て)な縫製ですが、少しカジュアルな装いに合うような柔らかくて軽い(肩パットや芯地など)シルエットに工夫がされているため、ビジネスシーンやリラックスシーン(デスクワーク)のどちらにも着用が可能という訳です。
関連記事:スーツを選ぶ時のポイントは3つ!生地の種類とそれ以外は何?
まとめ
おしゃれで便利なセットアップスーツとは、ビジネススーツ向けの生地を使用し、ジャケットとスラックス(スカート含む)を同じ生地(共地)で縫製した少しカジュアルな装いにも着用が可能な商品。
その魅力は、3つの着回し!「スーツ」「ジャケット」「スラックス(スカート含む)」といった3つの単体によるコーディネートが簡単でおしゃれにできるところです。
1着でも便利に着回しのできるセットアップスーツですが、色(柄)違いで2着あれば着回し(組み合わせ)の幅が広がり、より多くのコーディネートが楽しめます。
私は、ポリエステル100%の「無地(ブラック)」と小柄「杉綾(グレー)」のセットアップスーツを着用していますが、それぞれ簡単に組み換えてコーディネートが楽しめ、おしゃれに見えるので重宝しています。
特に異素材との組み合わせでは、無地(ブラック)や杉綾(グレー)のジャケットにブルージーンズやブラックジーンズを交互に組み合わせて着用し、ブラックのスニーカーを履くことが多く、自分でも気に入ったスタイル。
また、ベーシックな色目が基本のセットアップスーツですが、インナーを明るい色目(ブルーやピンクといったパステル調)にすることでイメージが大きく変わり、着用シーンの幅も広がります。最近では、ビジネスからカジュアルまで着用が可能なセットアップスーツでホワイトの皮スニーカーを履いて通勤しています。
スーツにスニーカースタイルは、以前に米国のニューヨーカー(スタイル)として通勤向けの記憶がありますが、日本では「FUN+WALK PROJECT」としてスポーツ庁の官民連携プロジェクトになっていますよね。今後はさらにスーツにスニーカースタイルが浸透し、定着して行くと思います。
「FUN+WALK PROJECT」は、歩くことをもっと楽しく、楽しいことをもっと健康的なものにするプロジェクト!です。私自身もこのプロジェクトに賛同しています。
セットアップスーツにスニーカーをぜひとも、お試しください!